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お客様の声

<インタビュー>地域に必要とされている薬局を未来に繋ぐ、事業承継という選択肢

有限会社アストラ


福岡県内で薬局を4店舗運営していた有限会社アストラ(福岡県朝倉市)・平位 昌稔 様は、2022年4月に、鹿児島県で調剤薬局を運営している法人に株式譲渡されました。現在は顧問として、同社の経営に関わっていらっしゃる平位様。ご自身で三代目となる地域に親しまれてきた薬局を、他法人にご譲渡されるに至った経緯や、そこにかけた想いについて、平位 昌稔 様にお話しを伺いました。

祖父の時代から三代続く、地域に親しまれてきた薬局

―有限会社アストラについて教えてください

私の祖母が薬剤師で、薬種商(現 登録販売者)である祖父と一緒にOTC医薬品の販売をはじめたことを皮切りに、叔父は祖父母に習いOTC医薬品販売を、父は漢方薬の処方を専門に地域住民に寄り添ってきました。その後、昭和から平成へと移り変わりゆく時代のなかで、国の政策や方針に伴い、院外処方が急激に増加していきました。これを機に、二代目である叔父が薬局を開業し、その後、私が三代目として受け継ぎました。

―大学卒業と同時に、有限会社アストラに入社されたんですか?

大学卒業後、私は福岡県を離れ、東京都の調剤薬局で薬剤師として勤務していました。一方で、人材の採用がなかなか難しい朝倉市で、叔父が事業を拡大していくにつれ、アストラも人材不足という経営課題に直面しました。そのため、当時勤務していた調剤薬局でやり残していたことや引継ぎを終えた後、2003年に、私もアストラに入社しました。

2005年には、新たにオープンした薬局の管理薬剤師を務め、5年後に叔父より引き継ぎ、代表取締役に就任しました。同じタイミングで弟が専務、従兄弟が常務となり、三人で経営に携わってきました。

―薬剤師になることを志した理由は何ですか?

私が薬剤師の道を目指したきっかけは、特に父の影響が大きいように思います。父は漢方薬の処方を専門としており、医師のもとで十分な回復が見込めなかった地域住民に対し、その技術と信頼で、多くの住民の回復に貢献してきました。幼い頃から、そんな父や叔父の背中を見て育ってきた私にとって、薬剤師は地域住民の健康増進に寄与する、そんなかっこいい存在でした。だからこそ、私も父や叔父のような薬剤師になって、地域住民の役に立ちたいと考えました。私と同様に、弟や従兄弟も大きな影響を受けていたと思います。

祖父の時代から、「このエリアで薬局と言えば平位さんのところ」と言われていましたし、地域住民のことを想う気持ち、寄り添う気持ちは他の薬局に負けないと自負していましたね。

地域の患者様・従業員のため、未来に繋ぐ事業承継という選択肢

―地域に親しまれてきた薬局のご譲渡を検討されたきっかけは何ですか?

私が想い描き、目指してきた薬局のあるべき姿と、国や薬剤師会が目指す薬局のあるべき姿との方向性が異なることに違和感や疑問を覚えたことが、譲渡を検討しはじめたきっかけです。 特にコロナ禍における国や薬剤師会の感染症対策がワクチン接種の推進一辺倒であり、有効性のみを住民に訴えかける姿勢に私は疑問を感じていました。ワクチン接種に大きな危険性が潜んでいる可能性が拭えなかった私にとって、今の薬局業界には貢献できないと感じました。「地域住民のため」という軸で考えた時に、業界と私の考え方や方向性が異なる状態で、当時、会長を務めていた支部薬剤師会のトップを続けることは難しいと感じ、譲渡を検討し始めました。

―廃業ではなく、事業承継を選択された理由を教えてください

祖父の時代から三代続き、地域住民からも認知され、頼っていただいていた薬局を廃業という形で奪ってしまうという選択肢は全く持っていませんでした。特にこのエリアは、薬局の件数もそれほど多くはないので、当社が廃業してしまうと、これまで利用してくださっていた患者様が不便になってしまいます。また、私と同じ志を持って、これまで一緒に歩んできてくれた従業員のことも考えると、事業承継という選択肢以外の考えはありませんでした。

―譲受先をご決断される際に、重要視されたポイントはありますか?

運営母体が変わることに伴い、経営方針が大きく変わること、従業員の処遇が変わること、この二つがないことを最重要視していました。譲渡後も違和感なく地域住民に利用してもらい、従業員にも安心して勤務してもらえるように検討を進めましたね。実際に、譲受法人に対して、このあたりの心配ごとは、今も一切ありません。

従業員に不信感を抱かせないため、譲渡過程では苦労も

―ご譲渡を進める過程や、ご譲渡後に苦労されたことはありますか?

譲渡を進める過程では、従業員に不信感や不安を感じさせないように振舞うことを、常に意識していました。もともと譲渡を全く検討していなかった自分と、コロナ禍で譲渡を検討し始めた自分と、2人の自分が同時に存在している胸中で、従業員に悟られないように接することに難しさを感じていました。
特に、私が直接声をかけて採用し、私の経営方針に賛同して勤務してくれた従業員も多数いるなかで、辛さを感じる場面もありました。

―従業員の皆さんに対して、ご譲渡についてお話しをされた際の反応はいかがでしたか?

突然の発表で、はじめは驚いている従業員も多くいましたが、運営母体が変わるだけで経営方針や処遇に大きな変化はないということに、大きな不安や心配ごともなく、安心してもらえた印象を受けました。

―ご譲渡を決断される際も、あまり大きなトラブルもなくご決断されたと伺いました

そうですね。役員全員の意見は一致していたので、大きなトラブルもなく決断に至りました。細かなところでは、譲受法人に求めるものに違いはありましたが、それぞれの希望も可能な限り汲んでくれたお相手でした。仮に、役員全員の意見が一致せず、誰かが疑問や不満を持つような状況であれば、譲渡を進めることは難しかったと思います。役員全員で今後目指していきたいことや、地域住民・従業員への思いが一致していたことは、譲渡を決断するうえでも進めていく過程でも、大切なポイントでしたね。

人の役に立ちたいという思いを軸に、新たなステージへ

―事業承継して良かったことを教えてください

地域住民や従業員に違和感や不便なく、今もなお、親しまれ続けているということは、廃業ではなく事業承継を選択したからこそのことだと思いますし、そんな事業承継を実現することができて嬉しく思っています。私個人としては、国や業界団体との方向性の合致が見込めなかった状況で、違和感や疑問を抱えながら薬局を運営していく難しさから解放されたことが良かったと感じています。
地域に必要とされている薬局を、事業承継という形で未来に繋ぐことができたこと、さらに、繋いだことによって、新たな風を期待できることは楽しみでもあります。

―今後の目標を教えてください

当時、支部薬剤師会会長として「地域住民のための薬剤師会にする」というスローガンのもと、会務に携わっていた私は、業界と私の考え方や方向性が異なることを理由に、道半ばで諦めないといけないことに辛さを感じていました。薬剤師会では叶えることができませんでしたが、私が考える「地域住民のため」になることを実行していきたいです。 その一つとして「食」の改善があげられます。病気の原因を根本から改善していけるように、時間にも余裕ができたので、今後は興味があった農業に積極的に関わっていこうかなと考えています。実は先日も、無農薬で農業を営まれている方のところに行ってきました。人の生活に欠かせない「衣食住」の「食」の部分から、地域住民の健康を守るための活動に携わっていけたらいいですね。

―さいごに、CBグループに一言お願いします

CBグループとは以前からお付き合いがあるおかげか、状況の把握や話はスムーズに進みました。特に担当のコンサルタントの方には本当にお世話になりました。私同様の譲渡理由を掲げている経営者はこれまでにも少ないなかで、私の想いを上手く汲み取って譲受先との交渉を進めていただいた手腕には頭が下がる思いもありましたよ。これからの時代はM&Aが更に加速していく時代であり、多種多様な譲渡理由が存在するようになるでしょうから、このようなコンサルタントがいるCBグループに任せて良かったと感じていますし、今後もこのようなコンサルタントの育成に期待しています。