000 %

お客様の声

<インタビュー>後継者不在と処方箋枚数の減少から事業承継を決意

元薬局経営者 菊本様


静岡県で薬局を2店舗運営していた菊本様は、2022年に、全国で薬局を運営している大手企業に株式譲渡を決断されました。ご自身で開業した薬局をご譲渡されるに至った経緯や、そこにかけた想いについて、菊本様にお話しを伺いました。

製薬会社でМRとして経験を積んだ後、薬局経営の道へ

―薬局経営に至った背景を教えてください

私の父といとこは薬剤師、おじは医者と、医療家系で過ごしてきた私は、以前から、私自身も何か医療に携わる仕事に就きたいと考えていました。そこで、薬学部に進学し薬剤師免許を取得しました。

大学卒業後、新卒で入社した製薬会社で約7年間、МRとして勤務していましたが、転勤も多く、私が希望するエリアで勤務することが叶いそうにありませんでした。そこで、「資格を生かし、希望エリアで薬局を経営してみようかな」とふと考えたことが、薬局経営を考え始めたきっかけでした。

―初めての薬局経営に不安はありましたか?

初めてのチャレンジに不安はつきものですよね。私の場合、妻の出身地が静岡県ということもあり、静岡県で開業しようと考えていましたが、都合よくご縁があるわけでもありませんでした。一方で、将来的に薬局経営を考えていた私は、製薬会社に勤めていた頃のよしみで、既に薬局を開業していた同期のもとで約2年間、薬剤師として勤務させてもらいました。 それから、近隣の医師から、「静岡県で薬局を開業しないか」というお話をいただき、開業を決意しました。

薬局経営自体には少なからず不安はありましたが、薬剤師として勤務経験も積んでいましたし、成功しても失敗しても、すべて私自身に返ってくるため、「チャレンジしたい」という気持ちの方が大きかったことを今でも覚えています。

安心して調剤を任せてもらえる薬局、従業員が働きやすい薬局を目指して

―約27年間、どのような想いを軸に、薬局経営を続けてこられましたか?

地域の皆さんや近隣の医師にとって安心して調剤を任せてもらえるような薬局、そして従業員にとって働きやすい薬局であることを軸に続けてきました。
特に、従業員に対しては、不安なく働いてもらえるような環境作りを心掛けていました。従業員が安心して働ける環境であればあるほど、より良いパフォーマンスが生まれると考えていたため、医師や患者様のためにも、従業員を大切にしてきました。

―従業員の皆さんに対して、具体的にどのようなことをしていましたか?

何か困っていることはないか、不安に感じていることはないか、日常において積極的にコミュニケーションをとっていました。頑張りに応じた給与やボーナス、さらには、休暇を取得しやすいような仕組みも整えていました。そのおかげか、20年以上、長く勤めてくれる従業員ばかりでした。

後継者不在と処方箋枚数の減少により事業承継を決断

―そんな薬局の譲渡を検討しはじめたきっかけを教えてください

私には後継者がいません。そのため、いつかは引退しようと決めていました。
私には子どもが3人いますが、それぞれ薬剤師ではない別の道を選択しました。薬剤師になって、私の後を継ぐことを考えた子どももいましたが、親の職業ありきで将来を決めるのではなく、自分が本当に進みたい道を考えて、歩んでほしかったので後悔はありません。

―引退の時期は具体的に決めていましたか?

具体的には決めておらず、3人の子どもが独立した後も薬局経営は継続したいと考えていました。
そんななか、譲渡を決断した決め手は、門前のクリニックが閉院したことです。2つのクリニックから応需している薬局でしたので、処方箋枚数が減少し、薬局経営も厳しくなっていきました。また、後継者がいないこと、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響で売上が減少したこともあり、譲渡を決断しました。

薬局経営の風向きを変えるために、店舗数の拡大や人件費の削減も検討しました。一方で、自身がいつまで経営を続けるか分からないなかで、店舗数を拡大することに疑問もありました。また、これまで長きに渡り、ともに働いてきてくれた従業員を、ここで裏切ることもできませんでした。だからこそ第三者への事業承継を選択しました。

―譲渡を決断されて、当社にお任せいただいた理由を教えてください

CBコンサルティング以外にも、複数のM&A仲介会社に相談していましたが、無理に話を進めようとせずに、丁寧に話を聞いて適切なアドバイスをしてくれる、そんな印象が特に強かったからです。私の思いを汲み取り、寄り添ってくれている、そのように感じました。

関係各所への伝え方に細心の注意を払うものの、退職者も

―譲渡を進める過程で苦労されたことは何ですか?

タイミングがくるまで、医師や従業員など関係各所に言えないことが、周りに隠し事をしているように感じて、特に辛かったです。
伝え方を誤ると、正しい形で私の思いや意図が伝わらないので、一人ひとりにどのように伝えるか、伝え方や話の構成は非常に悩みましたし、シミュレーションも繰り返しました。そんな日々が続いていたので、眠れない夜も続き、精神的な苦労はありましたね。

―実際に、医師や従業員の皆さんにお伝えされた際の反応はいかがでしたか?

一人ひとりとの会話のシミュレーションを繰り返したおかげか、特に大きなトラブルは起きず、反対がでることもありませんでした。私自身、伝える前は不安も大きかったですが、伝えると気持ちも楽になりました。

一方で、私が事業から離れることを受けて、退職に至った従業員もいました。そうならないことが一番でしたが、経営者が変わるということは、少なからず職場環境にも変化はありますし、不安を取り除けなかったことは残念に感じています。

重要視していたポイントはクリアするものの、予想外の課題も

―譲受先を決める際に重要視されていたポイントを教えてください

二点あり、一点目は従業員の処遇・待遇が変わらないこと、二点目は譲受後もきちんと運営してくれることを重要視していました。
どちらもクリアしている印象を受けた先に譲渡しましたし、今もきちんと運営されている印象を持っています。

一方で、従業員の退職は予想していなかったことでした。
今回、譲受先の企業は大手企業でした。だからこそ、経営者との距離が離れてしまい、それが従業員にとってやり辛さや不安に繋がってしまったようです。私自身が従業員と密にコミュニケーションをとっていたからこそ出てしまったケースかもしれません。

経営者とのコミュニケーションの量や距離に重点を置くならば、地場の中小企業に譲渡した方が良かったかと考えたこともありましたが、私が重要視していた、従業員の処遇・待遇が変わらないことは、大手企業の資本力ゆえに保たれている側面もあります。今後は、この選択を正解とすべく、私自身、行動していくしかありません。

引退後、家族と過ごす時間や趣味に使う時間を大切に

―事業承継して良かったことを教えてください

これまで、妻と薬剤師業務に携わってきたため、家族とゆっくり過ごす時間をとることができませんでしたが、引退後は、家族との時間を優先して作ることができています。また、未経験のことも経験でき、やりたかったことに時間を割くこともできています。例えば、私は学生時代、スキーを経験していますが、先日、学生を対象に2日間、インストラクターを経験しました。その他、趣味であるクライミングや乗馬、ゴルフ、英会話にも時間を使っています。

これまでしたくてもできなかったことが、時間ができたことでできるようになったことが、譲渡をして良かったことですね。