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スタッフコラム

「医療DX」とは~医療DXの現況と今後~


医療DX

昨今よく耳にする言葉、「DX」。電子処方箋やマイナポータルとの連動といった、徐々にシステム化されていく調剤薬局の背景には、国が推進する「医療DX」の存在があります。今回のコラムでは、最新情報をもとに「医療DX」を改めて紐解いていきます。

【骨格①】全国医療情報プラットフォーム

全国医療情報プラットフォーム

(出典)中央社会保険医療協議会 総会(第543回)議事次第 医療DXについて(その1)


2024年は2年に一度の診療報酬改定を控えています。中医協総会では4月26日、医療DXと診療報酬改定に関して議論を開始しました。この医療DXの骨子の一つに、「全国医療情報プラットフォーム」があります。「全国医療情報プラットフォーム」とは、簡潔に述べると、オンライン資格確認等システムと各種データ基盤、資格情報などのデータが蓄積された「図書館」になります。

現在、「全国医療情報プラットフォーム」は、全国の調剤薬局や医療機関が主体となり、カルテ情報、診療情報提供書、退院時サマリなどを、閲覧・共有できるよう設計されています。また、2023年4月から原則義務化されたマイナンバーカードの保険証化(オンライン資格確認システム)によって、医療被保険者情報のほか、レセプトに基づく薬剤情報、診療情報、処方箋情報、特定健診情報が、調剤薬局から閲覧可能となっています。さらに、「全国医療情報プラットフォーム」ではそれらの情報に加えて、自治体ごとの予防接種に関する予診情報、接種情報、検診情報、介護に関する被保険者情報、介護認定情報、介護事業者によるケアプラン、ADLなども閲覧できる予定となっています。

今後、「全国医療情報プラットフォーム」を活用することで、以下の実現が可能となります。

  • 生涯の保健医療データを自分自身で把握可能とすることによる、個人の健康増進
  • 全国の調剤薬局や医療機関などが必要な診療情報を共有することによる、質の高い医療
  • 質の高い健康サービスの提供や二次利用による創薬、治験などの促進

【骨格②】電子カルテ情報の標準化、標準型電子カルテの検討

「全国医療情報プラットフォーム」には電子カルテの一部情報も追加されることとなり、調剤薬局は患者本人の同意のもと、必要に応じて情報を共有できるようになります。なお、現在検討されている電子カルテ情報は、3文書6情報となります。3文書とは、①診療情報提供書、②退院時サマリ、③検診結果報告書。6情報とは、①傷病名、②アレルギー、③感染症、④薬剤禁忌、⑤検査(救急時に有用な検査、生活習慣病等)、⑥処方の各情報が該当します。これらの情報は調剤薬局にとって、服薬指導においても重要な情報になることが考えられます。今後、共有できる情報の範囲を拡大するために、電子カルテの標準規格を拡大し、クラウドベースの「電子カルテ(標準型電子カルテ)」の開発が検討されています。

結果として、「電子カルテ情報の標準化」による「全国医療情報プラットフォーム」の拡大が見込まれます。

【骨格③】診療報酬改定DX

電子処方箋・マイナポータルと電子版お薬手帳のアプリの連携について

(出典)中央社会保険医療協議会 総会(第543回)議事次第 医療DXについて(その1)

現在、レセコンのデジタル化はほとんど完了しており導入率はほぼ100%です。しかし、メーカーやバージョンにより仕様が異なることで、診療報酬改定の際には毎回、各ベンダーごとに更新プログラムを作成・配信し、調剤薬局においても更新設定やCDの取り込みなどの作業が必要となっています。そして、報酬改定の4月1日からの変更に合わせ、ベンダー・調剤薬局等の関係各所は短期間で集中的に対応するため、大きな負担となっています。この課題を、国が共通の算定モジュールを作成・運用することで、メーカー・ベンダー・調剤薬局等の負担を軽減できると考えられています。なお、共通算定モジュールの仕様や開発後の運用体制等について検討チームが設置され、地単公費マスタの作成及び運用ルールについての検討は、検討チームの下に、自治体や国保連合会を主な構成員に含む作業チームを設置して行われており、国保中央会が事務局を担っています。

今後、共通算定モジュールは、導入効果が高いと考えられる中小規模の病院を対象に提供が開始され、医療機関等の新設タイミングやシステム公開時期に合わせて導入が促進されます。調剤薬局や診療所向けには、相対的なシステム提供の支援が行われ、「標準型電子カルテ」と一体型のモジュールを組み入れた「標準型レセコン」をクラウド上に構築して、提供される見込みです。

電子処方箋の普及と医療DX

この医療DXにおいて重要となってくるのが「電子処方箋」です。業界全体を通して推進していく医療DXにおいて「電子処方箋」の導入は、調剤薬局が国から求められる最初の関門と言えます。2023年1月26日から運用が始まった「電子処方箋」管理サービスの運用ですが、厚労省の発表によると、現在、3,045施設(病院9、医科診療所224、歯科診療所9、薬局2,803)(4/16時点)で稼働中となっています。また、 事前の導入手続(利用申請)を行った施設数は、49,419施設(病院1,175、医科診療所18,919、歯科診療所10,890、薬局18,435)(4/16時点)となっています。普及がそこまで進んでいない要因の一つには、オンライン資格確認の導入やHPKIカードの発行申請、ソフト、システムの変更、「電子処方箋」利用申請、患者への説明等、対応すべきことが多くあるからだと考えられます。そもそも、調剤薬局における「電子処方箋」の導入意義は、以下の通りです。

  1. 患者の処方・調剤情報を踏まえた質の高い調剤・服薬指導
  2. 業務効率化
  3. 円滑なコミュニケーション

薬局経営者にとって、「電子処方箋」普及のための障害を乗り越えて得られる効果は、定量的に測定しにくいところがあります。一方で、「安心・安全な医療の提供につながる」「業務のスリム化」「ヒューマンエラーの減少」といった声が「電子処方箋」の導入効果として、中医協より紹介されています。医療DXの嚆矢となった「電子処方箋」普及ですが、各種情報の標準化・デジタル化が進むことで、今後ますますの普及が予想されます。

中医協における『医療DX』の議論は始まったばかりです。今後さらに夏ごろから具体的に診療報酬改定と絡めた議論がされていくものと考えられます。


今後もCBグループでは最新の情報を発信していきます。

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