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<座談会>調剤薬局経営者“二代目”に訊く、人事・教育制度に関する取り組み

三社インタビュー


対物業務から対人業務への転換が求められている調剤薬局業界で、薬剤師の育成や教育は必要不可欠となってきています。また、“二代目”経営者は既存の組織・人材をどのように教育・育成していくか、創業者とは異なる経営課題や悩みを抱えています。そこで今回は、兵庫県で調剤薬局を経営されている有限会社ホワイト企画(兵庫県伊丹市) 代表取締役社長 坂上 公平 様(以下、坂上様)、株式会社ファミリーファーマシー(兵庫県神戸市) 取締役 塚本 和達 様(以下、塚本様)、有限会社ひまわり薬局(兵庫県三木市) 代表取締役社長 松岡 丈二 様(以下、松岡様)をお迎えし、現在抱えている課題や取り組んでいること、今後取り組んでいきたいこと等、ざっくばらんにお話を伺いました。
※写真左から、松岡様、坂上様、塚本様

■今回のトークテーマ
「人事・教育制度に関する取り組み」について

採用について

―採用について、課題に感じていることや今後、取り組んでいきたいことはありますか?

塚本 様 :地域によっては採用も難しいなかで事業所に欠員が出ると、多少無理してでも採用に費用をかけざるを得ません。正直、相手次第で給与体系を決めなければいけない時があり、給与体系が決まっていた前職とのギャップをどのように埋めていくか、課題に感じていますね。

坂上 様 :私も同じ課題を抱えています。採用したいと思った方については、過剰に費用をかけてしまいがちです。
特に数年前、当社の平均年齢は40代後半~50代でした。そこで、20~30代の若手採用に踏み切りたい気持ちがありましたね。

―当時は、面接にいらっしゃった方々全てを採用する勢いだったと伺いました。

坂上 様 :そうですね。欠員が出ることも怖いですし、多少費用がかかり、人員が余剰になったとしても、採用したいと思った方々は採用していました。

塚本 様 :全ての方々を採用する勢いとはすごいですね。

坂上 様 :人件費は上がりましたが、当時採用した方々のなかには、昇格し、今年から役職が付いた方々もいます。また、2023年には10年ぶりに2つの調剤薬局をオープン予定ですが、立ち上げメンバーとしても活躍してくれています。多少の余剰が生まれるにしても、採用できる時に、採用したい人を採用することが、一つの解決策なのかもしれませんね。

塚本 様 :採用のターゲットは新卒ですか?中途ですか?

坂上 様 :過去には新卒採用も行っていましたが、現在は第二新卒採用をメインとしています。

塚本 様 :新卒は育てていく過程に、それなりの費用がかかりますよね。

坂上 様 :そうなんですよ。だからこそ、他の薬局である程度オペレーションを学んできた新卒2~3年目の人材を採用した方が良いと考え、シフトチェンジしました。採用は見せ方も大切だと思っています。そのためホームページやパンフレットも凝った作りにしましたよ。

塚本 様 :見せ方について、どのように工夫されましたか?

坂上 様 :私は保育園の園長も兼任しており、当社で働いてくれる従業員のお子様は無料で利用可能という点も見せたかったので、小児科のようなイラストタッチのデザインにしました。

―人材が充足している時こそ、採用のチャンスかもしれませんね。

塚本 様 :人材の充足に満足せずに、そういった時こそ採用を進めていく必要がありそうですね。

既存従業員の教育について

動向や自社の方針の伝え方について

坂上 様 :業界の変化が目まぐるしいなかで、動向や自社の方針をどのように既存従業員に伝えていますか?当社は一年に一回、全社会議で経営層の想いを伝えたり、社内YouTubeで薬局ビジョンを伝えたり、そのような機会を増やしているところです。

松岡 様 :朝礼で「このエリアで一番の薬局を目指す」という方針を伝えています。

坂上 様 :すごいですね。朝礼で伝え続けることが大切だと思います。

松岡 様 :そうですね。あとは、ITツールを導入し、当月の行動報告や次月の行動計画、上半期・下半期の計画・進捗について共有しています。さらに、毎月、管理薬剤師、エリアマネージャー、私で会議を実施し、前述の内容を踏まえて今後どうしていくかについて、私の想いも共有しながら話しています。

坂上 様 :各事業所で共通認識をもつことは大切ですよね。私も、事業所単位の評価を導入したくて、会社が目指す方針についてキーワードのみピックアップし、各事業所で、その方針達成に向けてどのように動いていくか、考えてもらっています。それを月次で管理薬剤師から共有してもらい、ディスカッションしています。
現在は、ディスカッションまでですが、今後は目標達成について評価して賞与に繋げるなどやっていけたらと考えています。

―ファミリーファーマシーは、10店舗規模ですが評価などはどのようにされていますか?

塚本 様 :原則、前年度をベースに考えていますが、このベース自体の見直しは必要だと考えています。一方で、ここは非常にセンシティブで、仮にベースが低くなってしまった際に、向上心をもって取り組んでくれる従業員もいれば、諦めてしまう従業員もいるかもしれません。

坂上 様 :そのあたり、非常に難しいですよね。

塚本 様 :難しいですね。薬剤師として地域貢献に関わっているという認識や自覚が薄いと、受け止めきれないように思います。まずは、管理薬剤師とある程度時間を設けて、ワンオンワンで話す機会を作っていきたいと思っていますが、皆さんのところでは既にやられていますか?

坂上 様 :当社では月に1回、管理薬剤師とのワンオンワンMTGを1時間、さらに、各事業所の管理薬剤師を集めた会議を2時間実施しています。そこでは、仕事や家族の話、趣味の話もしながら、コミュニケーションをとっています。

塚本 様 :横の繋がりも深まる素敵な取り組みですね。

坂上 様 :そうですね。また、そこで話した共通認識を各事業所の従業員にも落とし込んでもらうことでマネジメントにも繋がっていると思います。

松岡 様 :意欲を見せる従業員を育てていきたいし、それを管理薬剤師ができるような教育をしていきたいですね。

坂上 様 :管理薬剤師の教育は非常に大切だと思います。管理薬剤師さえきちんと会社の方針に沿ったマインドをもってくれていれば、何か予期せぬ事態が発生したとしても、そう簡単に会社は揺るがないと思っています。従業員が目指す姿も明確になるし、会社の安定にも繋がると考えています。
松岡さんが仰っていた「このエリアで一番の薬局を目指す」ということを従業員に浸透させていくことも非常に大切ですよね。それが、私たちが生き残る道だと思います。全国で一番とまでは言わないにしても、地域の患者様から選ばれる薬局を目指していきたいです。

後継者への相続・事業承継について

―現在考えていることや取り組んでいることはありますか?

坂上 様 :私には、会長である父と子どもが2人います。私自身、今は元気ですし、子どもも幼いので相続・事業承継について、今すぐ何かに取り組むという姿勢はもっていません。

松岡 様 :私には、薬学部に通う子どもがいます。薬学部進学という道を選択してくれたので、もちろん後継者候補ではあるものの、私自身、業界の将来について少なからず不安を抱えているので、「絶対に継いでほしい」とも思っていません。

坂上 様 :法改正やコロナ禍で前進したDXの推進等、調剤薬局のあるべき姿は日々変化し続けているなかで、不安もありますよね。そんななか前向きに、薬学部に進学されたことは嬉しいですね。

松岡 様 :そうですね。本人が望むのであれば、スムーズに相続・事業承継できるように、今から準備は進めていきたいです。

坂上 様 :私も、万が一私の身に何かが起きてしまった時のことを考えると、親族や第三者への相続・事業承継についても考えていく必要があると感じています。今はまだイメージがわきませんが、準備できる時に、できることからはじめていきたいです。

松岡 様 :はじめは、制度やスキーム等がきちんと整っている総合病院の門前薬局や、大手調剤薬局で経験を積んでから、引き継いでくれると私は嬉しいです。引き継いでくれるにしても、当社だけではなく視野を広げて、この業界で学び、活躍してほしいと思います。

塚本 様 :私にも子どもがいますが、正直、学びたいことを学び、進みたい道に進んでほしいです。私は今の仕事にやりがいも感じていますが、それは自分でこの道を選択したことも大きいと思っています。

坂上 様 :子どもが興味をもっていることや目指していることを一番に応援したい気持ちは、全員共通していますね。

今回は、「人事・教育制度に関する取り組み」をトークテーマに、皆さんに、ざっくばらんにお話を伺いました。次世代を担う経営者同士が抱える課題や取り組み事例について共有し、ともに学び、成長し合える機会となっていれば幸いです。

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